概要
- 携帯電話のように、もの作りの技術で先行しても、市場の競争で勝てるとは限らない。
- 中国では「三流企業がものを作り、二流企業が技術を開発、一流企業がルールを決める」。巨大市場を武器に国際標準規格に影響力を持つ。
- 市場で必要とされる技術、市場で勝てる戦略。技術と市場をどうつなぐかが課題。
感想
「三流企業が…」のくだりが刺激的。確かに、日本が礼賛?している「技術」は、製品の枠組みとして重要だ。でもその一方で技術の枠組みとして、「ルール」や「規格」が存在する。以前見た「ニッポンは勝ち残れるか 激突 国際標準戦争」というNHKの番組で、高電圧の送電技術について、日本企業が自分の規格を国際標準にするために立ちまわる様子が描かれていたのを思い出した。規格も、「ソフトパワー」の一種かも。
これまで、規格の選定争いで勝つだけでは商売上の成功に結び付かないのではと思っていたけど、自らの技術を標準規格にすることで市場で先行することが大きなアドバンテージをもつのだなあと思い至った。ネット周りの標準規格を考えても、選定するメンバーに有名ネット企業の肩書きが名を連ねているのをみて、これまでは単純に、大きな会社では基礎的な研究開発にも熱心なんだなあとしか思っていなかった。
ただ、「三流企業が…」も、仕事の貴賎をヒエラルキーで表現したものというよりは、多くの中小企業はもの作りで勝つ戦略を、次に大きな企業は技術開発で勝つ戦略を、トップクラスの企業は規格策定で他国に勝つ戦略を持て、ということなんじゃないだろうか。元の記事にも書いているけど、そういう国レベルの明確な戦略が中国にはあって、日本はのんきにいてよいのだろうか、と、小市民っぽいことを思わずにはいられない。
まあ、自分としてはとりあえずはもの作りを頑張るしかないけどね。
ネット周りの今後
ところで、今後ネット周りで規格争いが起きるとしたら、どういう分野だろう。ウェブアプリ関係かなあ。
MSがOffice 2010といっしょにリリースを予定しているという「Office Web App」は、GoogleのGoogle ドキュメントと競合する。いずれも今は、いかにデスクトップアプリをWebで実現するか、というところで注目を集めているように思うのだけど、ユーザーが増加するとともに高機能化し、モジュール化・コンポーネント化に関する技術が必要になるかもしれない。
現時点でウェブアプリのコンポーネント化技術として、XML-RPCとかSOAPとかあるけど、SOAPなんか特に設計の意識の高さは感心するけど、成功に結び付いていない(ような気がする)し、それこそ「市場で勝てる戦略」がなかったのかも。この世界はデファクトスタンダードが標準規格になることも多いから、今は誰も名前を知らない企業のウェブアプリの技術が5年後は標準規格として使われているということもありえなくもない。
ウェブアプリについては、機能の深まりとともに、利用シーンの広がりも進んでいくだろうから、そういった点でも技術革新が起きそう。