最後のマンガ展(井上雄彦)

井上雄彦のマンガ「バガボンド」の世界を取り上げた「最後のマンガ展」に行ってきた。

今年12月に休館の決まったサントリーミュージアム[天保山]にて、2010年3月14日(月)まで開催。


会場に入るまで

数日前の日経夕刊には、入場制限をするほどの人気であると書かれていた。そのため、9時30分の当日チケット販売開始時刻に、30分の余裕を持って到着したが、すでに長蛇の行列ができていた。おそらく数百人。

来ていた人達をみると、たぶん20代?30代くらいの年代が圧倒的に多い。男女比では、4?5:1くらいで男性が多かった。「バガボンド」の主要な読み手と思われるので意外ではないが、その人たちがこんなにも集まってきていることに驚いた。

最期のマンガ展

↑午前11時台に帰るときに既にこの状況

世間でこの展示がどういう反応を持たれているのか、正直よく知らなかったが、吉川英治の宮本武蔵が時代小説として現代に名前が残っているように、井上雄彦の宮本武蔵も世代を超えて、名前が残るのではないかという印象を持つほどだった。言いすぎ?

展示の内容

展示の内容としては、武蔵がその一生の終わりに、これまで戦ってきた相手を述懐する心の中を、マンガの原稿や、水墨画風の絵画で順に追って見ていくというものだった。俗に言う「走馬灯」というやつ。

原稿の印象は、見慣れたマンガのページと違いないけど、たまに大きなカンバスに描かれた絵が出てくる。見上げた大空に、高く高く羽を広げた鳥の絵とか、幼い武蔵?が母親に抱っこされている絵とか。空間を大きくとった一方、存在感を感じさせる絵が多く、その色あいもあって、どこか晩年の武蔵の安定した心のうちと重なるように思った。

感じたこと

私は「バガボンド」の何巻かを実家などで読んで、部分的には知っているが、全体を通しては知らなかった。そのため、今回の展示に先立ち、予習のために、マンガ喫茶に行って全巻流し読みをしてきた。そういうわけであまり熱心な読者というわけではない。

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↑予習中…

ただし、マンガのテーマと思われる武蔵の苦悩はとても現代人的にシンパシーを感じるものであったので、今回の展示でどのように表現されているか気になっていた。ちなみに又八の苦悩も、マンガでは2番目くらいに描かれていると思うが、今回の展示には一切出てこなかった。

その武蔵の苦悩は、展示を見ると、完全に解消されているように見える。それどころか某人物が現れて、武蔵に生き方を教わったとか、お礼を言いたいとか、そういう人がたくさんいるという場面も。人の命をたくさん奪った武蔵が、与える側になったということか。

しかし、正直なところ、どうやって心の安住を得たのかというのがわからない。単なる人とのつながりだけで説明できるものではなく、武蔵の場合は、最強、天下無双への強烈な関心が妨げとして存在する。

単に、名実ともに最強の称号を得たから、ではないだろう。その反例として父親の無二斎の存在がある。強さに対する関心を失うというのも違う。「にゃむ」の人達が言っていることとが大いに関係しているのだろうけど、よくわからん。

折しも、最新刊の32巻では、武蔵の前に伊藤一刀斎が現れ、武蔵の「我」をひきずり引き出すという場面がある。ここからどうやって、安定に至るのか?最も気になるところ。

謎と仮説

なお、某人物が9歳年上の妻を失って云々…の部分で、私も気付かなかったが、弟の友人いわく、その妻とは某女性ではないか、という仮説があるそうだ。

そうだとすると、武蔵の心の安定に、某女性は離れて存在していたことになる。ちょっと寂しいね。

あと、一点の曇りもないかに思える武蔵の心情とは明らかに印象が異なり、他の展示作品とは、作品自体も、見せ方も違うものがあって、あれは一体どいういうことなのだろう、どういう視点だろう、ということは気になった。

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