私に触れる肉体は唇としたと指だけだった。でもそれで十分だった。どんな部分も彼はおろそかにしなかった。私は自分に肩甲骨や、こめかみや、くるぶしや、耳たぶや、肛門があることをはじめて感じた。彼はそこを丹念に愛撫し、唾液で湿らせ、唇で味わった。
読んだ直後は、無垢な少女がエロじじいにあれやこれやされるのが、(たぶん自分が若いからだろう)許せない、感情的なバイアスがかかって、感想も何もなかった。さっさと寝た。
私に触れる肉体は唇としたと指だけだった。でもそれで十分だった。どんな部分も彼はおろそかにしなかった。私は自分に肩甲骨や、こめかみや、くるぶしや、耳たぶや、肛門があることをはじめて感じた。彼はそこを丹念に愛撫し、唾液で湿らせ、唇で味わった。
読んだ直後は、無垢な少女がエロじじいにあれやこれやされるのが、(たぶん自分が若いからだろう)許せない、感情的なバイアスがかかって、感想も何もなかった。さっさと寝た。
「とくべつ?」「ええ、何かとても奇妙なアクセントで、言葉をのばしたり縮めたりするの。まるで風が吹いているような具合に高くなったり低くなったりして……」僕は彼女の手の中の頭骨を見ながら、ぼんやりした記憶の中をもう一度まさぐってみた。今回は何かが僕の心を打った。「唄だ」と僕は言った。
「自分がどうしてここに来たのかも、僕にはよくわからない」と僕は言った。
じっと天井を見ていると、そこから振りかかってくる黄色い電灯の光の粒子が膨らんだり縮んだりしているように見えた。恐らく僕の傷つけられた瞳のせいだろう。僕の目は何かとくべつなものを見るために、門番の手によって作りかえられてしまったのだ。壁にかかった古い大きな柱時計がゆっくりと無言のうちに時を刻んでいた。
【概要】
街についた最初の日、僕は門番から、図書館に行き古い夢を読むように言われた。「門番がこの街に一人しかいないように、夢読みも一人しかいない。なぜなら夢読みには夢読みの資格が要るからだ。俺は今からその資格をあんたに与えねばならん」。門番はそう言うと、ナイフで僕の両目に夢読みのしるしをつけた。
その何日かあとの夕方、僕は図書館をたずねた。図書館には古い夢の番と、夢読みの手伝いを仕事としている女の子がいた。彼女の顔は、僕の心の中で何かと強く結びついているように思ったが、思い出すことはできなかった。
【感想】
なぜこの街に来たのかわからないとか、どこか現実離れした世界の記述をみると、夢の中の世界のようだ。まあ実際、「夢」を読むなんて言っているけど。
「ハードボイルド」のほうの世界は、ものがあって、その上に意味があって、確固たる世界のありようが形作られていたのに対して、「世界の終わり」の方の世界は、意味を残したまま、ものの形を取り外してしまったかのような、ぼんやりした感じ、何かが漠然と欠けているような不安定感がある。
この本を薦めてくれた人が、物語に図書館が出てくるよーと言っていたのだけど、「夢」を所蔵する図書館とは?「世界の終わり」で図書館は何をしてるの?と気になるところではある。
「この程度のものなら洗い出しで十分でしょう」と私は言った。「この程度の頻度類似性なら仮説ブリッジをかけられる心配はありません。もちろん理論的には可能ですが、その仮説ブリッジの正当性を証明することはできませんし、証明できなければ誤差という尻尾を振りきることはできません。それはコンパスなしで砂漠を横断するようなものです。モーゼはやりましたがね」
角笛の音が街にひびきわたるとき、獣たちは太古の記憶に向かってその首をあげる。千頭を越える数の獣たちが一斉に、全く同じ姿勢をとって角笛の音のする方向に首をあげるのだ。あるものは大儀そうに金雀児の葉を噛んでいたのをやめ、あるものは丸石敷きの舗道に座り込んだままひづめでこつこつと地面を叩くのを止め、またあるものは最後の日だまりの中の午睡から醒め、それぞれに空中に首をのばす。
私が言いたいのは特殊な現実の中にあっては?というのはもちろんこの馬鹿げたつるつるのエレベーターのことだ?非特殊性は逆説的特殊性として便宜的に排除されてしかるべきではないか、ということである。機械の手入れを怠ったり来訪者をエレベーターに乗せたきりあとの操作を忘れてしまうような不注意な人間がこれほど手の込んだエキセントリックなエレベーターを作ったりするものなのだろうか?答えはもちろんノオだった。
【概要】
ダニー・ボーイ…アイルランドの民謡。(youtube.com)
ワーロック…1959のアメリカ映画。西部劇。
ヘンリー・フォンダ…20cのアメリカの俳優。「12人の怒れる男」にも出演しているそうだ。全然覚えていない。(ja.wikipedia.org)
マルセル・プルースト…19c〜20cのフランスの哲学者。(ja.wikipedia.org)